99年度〜隆盛。
2005/04/05 Tue 00:43
再月刊から一年。今回は99年度です。
煽り文も「日本一アツイ少年漫画誌」と変え、文字通り「厚く」そしてヒット作が生まれたのがこの年でした。同時に「同人ガンガン」路線もさらに強化されていくわけなのですが・・・。
煽り文も「日本一アツイ少年漫画誌」と変え、文字通り「厚く」そしてヒット作が生まれたのがこの年でした。同時に「同人ガンガン」路線もさらに強化されていくわけなのですが・・・。
この年は漫画としてのヒット作は多かったのですが、アニメ化作品は一つもありませんでした。要は「貯金が切れた」のがこの年だった訳です。そういった要素を補充しようとしたのかは解りませんが、次々と新人による新作が投入されました。
連載作品もさることながらこの年読みきりでデビューした作者を挙げてみると・・・荒川弘を筆頭に神田晶、山崎風愛と今のガンガンを支える層々たる面子が揃っています。後に「マジナル」を連載する「だいらくまさひこ」ことMINAMOの「コウノトリの仕事」も良作でした。
4月からはドラクエ四コマで有名な魔神ぐり子の「コインランドリー」が連載開始。この作品の連載経緯はかなり異色でした。元々「わくわく漫画家への道★」というガンガン内の漫画家養成のテクニックを教えるための企画だったのですが、毒々しい魔神ぐり子と黒子の担当・下村氏の掛け合いが多くの読者に受け、連載昇格となりました。かなり私的には好きでしたがコミックスにはなっていません。
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PEACE MAKER鐵 5 (5)
5月からは「ワガママ天使の育て方。」で人気を獲得した黒乃奈々絵が「新撰組異聞PEACEMAKER」を連載。全員美形の新撰組モノです。今から考えればかなり狙ってるなぁ、と思います。連載からすぐに人気となり、一時は少年ガンガンの実質的な看板も務めた漫画です。次のアニメ化はこれだろう、とも言われていましたが・・・。続きは2001年度でお話します。
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がじえっと 2 (2)
7月、8月、9月には「魔法陣グルグル」の衛藤ヒロユキが特別読みきり「ムジナトラックス」を掲載。しかしこの作品ここで完結せず、2001年になってガンガンパワードにて「ヒナタ町日誌ムジナトラックス」として完結しました。足掛け3年。忘れた頃の掲載でした。
7月はガンガンでは連載はありませんでしたが、ガンガンWINGの方では5つも同時に新連載が始まっています。
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スパイラル―推理の絆 (12)
前年度の「魔探偵ロキ」に続き、推理モノ作品「スパイラル〜推理の絆〜」が9月に連載開始。ただ、今となってはこの2作品は「どこが推理?」と言いたくなりますね(笑)後にアニメ化されますが、その時期はコンビニでもスパイラルのコミックスを見かけました。今となっては懐かしいです。
また、この作品は原作者をミステリー作家である城平京が務めています。エニックスでは人気が出た作品はノベル化することがありますが、プロが書いているとは言え所詮原作者がノベル化作品を書いている訳ではないので下手な同人小説の様な出来になってしまうこともあります(私的には浪漫倶楽部の小説はよく原作の雰囲気を再現していたと思います)。しかしこの作品に限っては小説家である原作者がノベル版を書いているので雰囲気はそのままとのこと。
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鋼の錬金術師 (1)
またこの9月号では「鋼の錬金術師」でおなじみ荒川弘が「STRAY DOG」でデビュー。後に荒川さんは、
「これが初めての投稿だったのに大賞受賞しちゃってドリーム街道一直線だった」
と語っていますが最初の投稿でこのクオリティは衝撃でした。「この人は来るな・・・」と薄々思っていましたが、2001年より連載された「鋼の錬金術師」は大ヒットとなったのはご存知の通りです。最初の読み切りからその片鱗は見られたわけですね。
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閃光華るびくら 3 (3)
12月には見田竜介による「朱玄白龍るびくら」が連載。私的には「ドブゲロサマ」以来の衝撃的な絵でした。やはり少年ガンガンには合わなかったのかその後「閃光華るびくら」と名前を変えて二部をGファンタジーで連載開始。Gファンの方が雑誌の色が合っていたようでそれなりの人気を博したようです。
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ヴァルキリープロファイル(通常版)
2000年に入り、3月からはトライエース製作の話題ゲーム「ヴァルキリープロファイル」がゲーム発売後半年もしないうちに漫画化。作画は土方悠が務めましたが、「人気ゲームを漫画に完全移植」のコピーを真に受け過ぎたのか最初の数話はゲームの台詞を一言一句完全にそのまま使っていました。ちょっとやりすぎだと思いました(笑)
この号に載っていた読切「BAD FATHER」は完成された絵柄でテンポの良い良作ギャグマンガでした。作者はカトアサ。この方何処へ行ってしまったんですかね?ヤングガンガンあたりで何か連載してくれないかな、と思っています。
同じく3月にはガンガンWINGにて「ジンキ」が連載開始。この作品と作者の綱島志郎についてはこちらの記事で詳しく書いていますのでよければご覧ください。
99年度、こうして有力な連載と新人作家を獲得したガンガンは2000年度にさらに勢いを付けることになります。次回はそんな2000年度の話をお届けします。
【この頃の他の作品】
■マーブル GROW UP!〜盲導犬の物語〜
ガンガンに二号連続で掲載された読切作品です。「監修/財団法人日本盲導犬協会」というガンガンにしては珍しい教育色の強い作品でした。
作画をやっていた真三月司さんはその後「High球!いんぷれっしょん」を連載しました。最初こそ「つまらない」「キャラがむかつく」みたいなことを言われていましたが終盤になってかなり面白くなったことが印象に残っています。その後某作家さんから聞いた話ですが「打ち切りが決まると作者があせって展開が早くなるので面白くなるんだよ」とのこと。納得。
■ぼくらのポストマン
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スターオーシャンTill the End of Time 5 (5)
「パンツァークライン」「スターオーシャン3」の神田晶さんのデビュー作です。等身の高いキャラ造形とシリアスな絵柄にも拘らずこの漫画はギャグ漫画でした。内容はと言うと、何故かプロレスが出来る郵便配達員がカツアゲをしていた不良をプロレス技で叩きのめすというもの。こう書くとつまらなそうですが・・・。
未だ私は神田さんの最高傑作はパンクラでもSOでもなくこの漫画だと思ってます。それくらい面白いギャグ漫画だったのです。「えー?」と思う人も居るかもしれませんが、パンツァークラインで割りと真面目なバトル漫画を書き始めたことの方が最初から見ていた人間に取っては意外だったと思います。ミスフルの鈴木信也は読みきりはガチガチのバトルだったのに連載でギャグ路線になりましたが神田さんは真逆でしたね。
■徒爾少々
エニックスの漫画賞で佳作を受賞した山祗晶緋呂の読切。恐らくは考古学と哲学に精通してるであろう作者の感性が遺憾なく発揮された作品でした。絵柄は上手いとは言いがたいものでしたが、何と初めて書いた漫画がこの作品だったという話に驚いた覚えがあります。
山の隠れ家に住む青年・苫古は時間を自由に行き来できる能力の持ち主。彼はいろんな古美術品を盗み出し、世間を騒がす大怪盗。しかし彼の目的は、美術品そのものではなく、それにまつわるエピソード。その為のキーとして彼は美術品を盗み、それを手がかりに時間を遡ってエピソードを見に行くと言う話でした。
「アカシックレコード」「オーパーツ」といった哲学的・考古学的な用語の出てくる不思議な雰囲気の漂う作品です。舞台がペルーというのも他にない世界観でした。
現在、山祗さんは同人活動をされているそうです。ガンガンでの掲載はこの徒爾少々一度きりでしたが、徒爾少々の続きは同人誌の方でやっているそうで。
一年ほど前にネットでホームページを発見し、メールを送りました。通販は現在やっていないそうなのですが、特別に「徒爾少々」の続編をご好意で頂きました。5年越しで続編を読んだわけですが相変わらずいい作品でしたね。
■DOME CHILDREN
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ドームチルドレン 3 (3)
ほんとこの年の読みきりは語るべき作品が多いです。
最終戦争で滅び去った地球…その中で生き残ったのは核シェルターに逃げ込んだ一部の科学者のみ。この「ドームチルドレン」はそのドーム(=核シェルター)の中で希望を胸に膨らませ暮らす子供たちの物語。
山崎風愛のデビュー作でエニックスの漫画賞大賞受賞作。一言で言うなら「感動作」です。読みきりで一番涙腺が緩んだのはこの漫画です。たった40ページほどでここまでの世界観を出した作品を他に知りません、少なくともエニックスでは。読切の腕だけで言えば荒川さんを超えてるかもしれませんね。上手くは言えませんが人間観察が上手いと言うんでしょうか。
その後、ドームチルドレンは同名でガンガンパワードにて連載。本当は読みきりで終わらせたかったと後に風愛さん自身は語っていた気がしますが、連載バージョンもいい話を書くなぁ、という印象は揺るぎません。全3巻、最後はちょっと寂しいですが是非読んでほしい作品ですね。子供の録音メッセージと会話する母親の姿は切な過ぎるよなぁ・・・。
連載作品もさることながらこの年読みきりでデビューした作者を挙げてみると・・・荒川弘を筆頭に神田晶、山崎風愛と今のガンガンを支える層々たる面子が揃っています。後に「マジナル」を連載する「だいらくまさひこ」ことMINAMOの「コウノトリの仕事」も良作でした。
4月からはドラクエ四コマで有名な魔神ぐり子の「コインランドリー」が連載開始。この作品の連載経緯はかなり異色でした。元々「わくわく漫画家への道★」というガンガン内の漫画家養成のテクニックを教えるための企画だったのですが、毒々しい魔神ぐり子と黒子の担当・下村氏の掛け合いが多くの読者に受け、連載昇格となりました。かなり私的には好きでしたがコミックスにはなっていません。
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PEACE MAKER鐵 5 (5)
5月からは「ワガママ天使の育て方。」で人気を獲得した黒乃奈々絵が「新撰組異聞PEACEMAKER」を連載。全員美形の新撰組モノです。今から考えればかなり狙ってるなぁ、と思います。連載からすぐに人気となり、一時は少年ガンガンの実質的な看板も務めた漫画です。次のアニメ化はこれだろう、とも言われていましたが・・・。続きは2001年度でお話します。
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がじえっと 2 (2)
7月、8月、9月には「魔法陣グルグル」の衛藤ヒロユキが特別読みきり「ムジナトラックス」を掲載。しかしこの作品ここで完結せず、2001年になってガンガンパワードにて「ヒナタ町日誌ムジナトラックス」として完結しました。足掛け3年。忘れた頃の掲載でした。
7月はガンガンでは連載はありませんでしたが、ガンガンWINGの方では5つも同時に新連載が始まっています。
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スパイラル―推理の絆 (12)
前年度の「魔探偵ロキ」に続き、推理モノ作品「スパイラル〜推理の絆〜」が9月に連載開始。ただ、今となってはこの2作品は「どこが推理?」と言いたくなりますね(笑)後にアニメ化されますが、その時期はコンビニでもスパイラルのコミックスを見かけました。今となっては懐かしいです。
また、この作品は原作者をミステリー作家である城平京が務めています。エニックスでは人気が出た作品はノベル化することがありますが、プロが書いているとは言え所詮原作者がノベル化作品を書いている訳ではないので下手な同人小説の様な出来になってしまうこともあります(私的には浪漫倶楽部の小説はよく原作の雰囲気を再現していたと思います)。しかしこの作品に限っては小説家である原作者がノベル版を書いているので雰囲気はそのままとのこと。
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鋼の錬金術師 (1)
またこの9月号では「鋼の錬金術師」でおなじみ荒川弘が「STRAY DOG」でデビュー。後に荒川さんは、
「これが初めての投稿だったのに大賞受賞しちゃってドリーム街道一直線だった」
と語っていますが最初の投稿でこのクオリティは衝撃でした。「この人は来るな・・・」と薄々思っていましたが、2001年より連載された「鋼の錬金術師」は大ヒットとなったのはご存知の通りです。最初の読み切りからその片鱗は見られたわけですね。
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閃光華るびくら 3 (3)
12月には見田竜介による「朱玄白龍るびくら」が連載。私的には「ドブゲロサマ」以来の衝撃的な絵でした。やはり少年ガンガンには合わなかったのかその後「閃光華るびくら」と名前を変えて二部をGファンタジーで連載開始。Gファンの方が雑誌の色が合っていたようでそれなりの人気を博したようです。
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ヴァルキリープロファイル(通常版)
2000年に入り、3月からはトライエース製作の話題ゲーム「ヴァルキリープロファイル」がゲーム発売後半年もしないうちに漫画化。作画は土方悠が務めましたが、「人気ゲームを漫画に完全移植」のコピーを真に受け過ぎたのか最初の数話はゲームの台詞を一言一句完全にそのまま使っていました。ちょっとやりすぎだと思いました(笑)
この号に載っていた読切「BAD FATHER」は完成された絵柄でテンポの良い良作ギャグマンガでした。作者はカトアサ。この方何処へ行ってしまったんですかね?ヤングガンガンあたりで何か連載してくれないかな、と思っています。
同じく3月にはガンガンWINGにて「ジンキ」が連載開始。この作品と作者の綱島志郎についてはこちらの記事で詳しく書いていますのでよければご覧ください。
99年度、こうして有力な連載と新人作家を獲得したガンガンは2000年度にさらに勢いを付けることになります。次回はそんな2000年度の話をお届けします。
【この頃の他の作品】
■マーブル GROW UP!〜盲導犬の物語〜
ガンガンに二号連続で掲載された読切作品です。「監修/財団法人日本盲導犬協会」というガンガンにしては珍しい教育色の強い作品でした。
作画をやっていた真三月司さんはその後「High球!いんぷれっしょん」を連載しました。最初こそ「つまらない」「キャラがむかつく」みたいなことを言われていましたが終盤になってかなり面白くなったことが印象に残っています。その後某作家さんから聞いた話ですが「打ち切りが決まると作者があせって展開が早くなるので面白くなるんだよ」とのこと。納得。
■ぼくらのポストマン
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スターオーシャンTill the End of Time 5 (5)
「パンツァークライン」「スターオーシャン3」の神田晶さんのデビュー作です。等身の高いキャラ造形とシリアスな絵柄にも拘らずこの漫画はギャグ漫画でした。内容はと言うと、何故かプロレスが出来る郵便配達員がカツアゲをしていた不良をプロレス技で叩きのめすというもの。こう書くとつまらなそうですが・・・。
未だ私は神田さんの最高傑作はパンクラでもSOでもなくこの漫画だと思ってます。それくらい面白いギャグ漫画だったのです。「えー?」と思う人も居るかもしれませんが、パンツァークラインで割りと真面目なバトル漫画を書き始めたことの方が最初から見ていた人間に取っては意外だったと思います。ミスフルの鈴木信也は読みきりはガチガチのバトルだったのに連載でギャグ路線になりましたが神田さんは真逆でしたね。
■徒爾少々
エニックスの漫画賞で佳作を受賞した山祗晶緋呂の読切。恐らくは考古学と哲学に精通してるであろう作者の感性が遺憾なく発揮された作品でした。絵柄は上手いとは言いがたいものでしたが、何と初めて書いた漫画がこの作品だったという話に驚いた覚えがあります。
山の隠れ家に住む青年・苫古は時間を自由に行き来できる能力の持ち主。彼はいろんな古美術品を盗み出し、世間を騒がす大怪盗。しかし彼の目的は、美術品そのものではなく、それにまつわるエピソード。その為のキーとして彼は美術品を盗み、それを手がかりに時間を遡ってエピソードを見に行くと言う話でした。
「アカシックレコード」「オーパーツ」といった哲学的・考古学的な用語の出てくる不思議な雰囲気の漂う作品です。舞台がペルーというのも他にない世界観でした。
現在、山祗さんは同人活動をされているそうです。ガンガンでの掲載はこの徒爾少々一度きりでしたが、徒爾少々の続きは同人誌の方でやっているそうで。
一年ほど前にネットでホームページを発見し、メールを送りました。通販は現在やっていないそうなのですが、特別に「徒爾少々」の続編をご好意で頂きました。5年越しで続編を読んだわけですが相変わらずいい作品でしたね。
■DOME CHILDREN
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ドームチルドレン 3 (3)
ほんとこの年の読みきりは語るべき作品が多いです。
最終戦争で滅び去った地球…その中で生き残ったのは核シェルターに逃げ込んだ一部の科学者のみ。この「ドームチルドレン」はそのドーム(=核シェルター)の中で希望を胸に膨らませ暮らす子供たちの物語。
山崎風愛のデビュー作でエニックスの漫画賞大賞受賞作。一言で言うなら「感動作」です。読みきりで一番涙腺が緩んだのはこの漫画です。たった40ページほどでここまでの世界観を出した作品を他に知りません、少なくともエニックスでは。読切の腕だけで言えば荒川さんを超えてるかもしれませんね。上手くは言えませんが人間観察が上手いと言うんでしょうか。
その後、ドームチルドレンは同名でガンガンパワードにて連載。本当は読みきりで終わらせたかったと後に風愛さん自身は語っていた気がしますが、連載バージョンもいい話を書くなぁ、という印象は揺るぎません。全3巻、最後はちょっと寂しいですが是非読んでほしい作品ですね。子供の録音メッセージと会話する母親の姿は切な過ぎるよなぁ・・・。